国民的な詩人であるまど・みちおさんのだれの心にも響く詩と、独自の世界観で活躍を続けるデザイナー、渡邉良重さんの絵が生み出す珠玉のコラボレーション。宇宙的な視点を持つまどさんの世界観を再発見し、ことばから広がるアートの力を五感でたのしめる、喜びに溢れた一冊です。
○推薦文
詩と絵がつくる特別な窓
ある場所の白い壁に、詩と絵がある。それは言葉と絵なんだけど、まるで窓があるみたいだ。その窓からは、遠いところや、いま、ここ、自分のことや、あたりまえのことがどんなにかけがえがないかということが見える。ある小児病棟の壁に、そんな窓がかかっている。まど・みちおという詩人と、渡邉良重という画家が創った〈特別の窓(ホスピタルアート)〉。この本に並んでいるのは、その窓たちだ。
松田素子(編集者)
〇担当編集者より
まど・みちおさんの詩と渡邉良重さんの絵。それぞれの世界が交互に響き合い、読む人の心に新たな世界が広がる本です。
まどさんの詩は、平易なことばで、とても懐が深い。頭と心に同時にしみこむようなことばだなあ、と感じます。渡邉さんの今回の絵はモザイクタイル調で描かれているものが多く(その経緯は巻末の「『うたをうたうとき』ができるまで」をぜひご高覧ください)、そのことで「人が描いた絵」というよりも、長い時間をかけて創られた壁画のような、ある種の物質感をもつています。
「世界はこんなにも美しい」これらの作品をはじめて目にしたときに感じました。
わたしたちは、こんなにも美しい世界に生きている。生かされている。
「ある」ことは「ない」ことによってかたちづくられていて、自分の輪郭というものはあらゆるものによってつくられ、彩られていることに感謝の気持ちを抱きます。
まどさんが見た世界、膨大な詩から渡邉さんが選んだ17篇の詩と心に響いて生まれた絵。のびやかな文字、めくりごこちのよいページ、鮮やかな印刷、本ならではの喜びを体験してほしいです。
○プロフィール
渡邉良重(わたなべ よしえ)
アートディレクター、デザイナー。1961年、山口県に生まれる。山口大学卒業。グラフィックデザインを主とするデザイン制作会社・ドラフトを経て、アートディレクターの植原亮輔氏と共に2012年にキギ(KIGI)を設立。グラフィック、テキスタイル、「D-BROS」をはじめとするプロダクトのデザインを手がける。洋服やファッションのブランド「CACUMA」、琵琶湖の職人達と共に陶器を中心とした「KIKOF」などのブランドを立ち上げ、2015年には東京・白金にギャラリー&ショップ「OUR FAVOURITE SHOP」をオープンする。著書に『ブローチ』(文・内田也哉子)や『ジャーニー』(詩・長田弘、ジュエリー・薗部悦子)、『UN DEUX』(文・高山なおみ)、『しんじゅのこ』(文・福永信)、作品集『キギ/KIGI』、マガジン形式の作品集『KIGI_M』シリーズを刊行。2017年、宇都宮美術館にて大規模個展「KIGI WORK & FREE」を開催。東京ADCグランプリ、東京ADC会員賞、第19回亀倉雄策賞など受賞。
まど・みちお
詩人。1909年11月16日、山口県に生まれる。本名は石田道雄。1934年に、まど・みちおのペンネームで雑誌に投稿した童謡が北原白秋に選ばれて特選となる。1936年、「ふたあつ」が作曲、レコード化される。1948年より婦人画報社を経て国民図書刊行会(現チャイルド本社)に勤務。「チャイルドブック」等の編集に携わる。1951年、「ぞうさん」を書き、翌年、団伊玖磨の曲でラジオ放送される。1959年に退社し、詩の創作に専念。1968年に初めて出版した詩集『てんぷらぴりぴり』が野間児童文芸賞を受賞。1992年刊行の『まど・みちお全詩集』で、芸術選奨文部大臣賞、産経児童出版文化賞大賞、路傍の石文学賞特別賞を受賞。同年に皇后・美智子選訳の『THE ANIMALS』を日米同時出版。1994年に日本人初の国際アンデルセン賞作家賞、続いて1998年度の朝日賞を受賞。2001年刊行の詩集『うめぼしリモコン』で丸山豊記念現代詩賞、2003年に日本芸術院賞を受賞。詩だけではなく、50代前半に集中的に描いていた絵をまとめた『まど・みちお画集 とおいところ』もある。2014年2月28日に104歳で永眠。
◆読者はがきから
ホスピタルアート+まどみちおさんの詩。
なんてセンスが良いのでしょう。
選ばれた詩は、どれも大好きなものばかりでした。
誰かに届ける――よくみんな使います。私も。
でも、こんなふうな「誰か・どんなふうに」があるなんて知りませんでした。
新しい世界をひらいてくれてありがとうございました。
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私は小学校などでストーリーテリングの活動をしています。その時、詩を紹介したりしていますが、まどさんの新しい詩集があるといいな~と思っていました。『全詩集』は味気なく思っていました。
タイルの絵というのが、ちょっと最初変わっていると感じましたが、本の成り立ちなどもまじえて、子どもたちに紹介できる本で、たくさん使っていきたいと思います。
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本をひらいて、色とことばに囲まれているうち涙がこぼれました。まどさんのことばからうまれたアートが病院に在って、多くの人の心を動かすように、自然なことのように、涙がこぼれました。
この素敵な本をつくってくださって、ありがとうございます。
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2012年にまどみちおさんのりんごの詩に出会いました。
人生の中でこの詩に力を与えられています。説明できませんが、とにかく、生きていけます(あることと ないことが まぶしいように ぴったりだ)。
食卓にりんごをひとつ置いています。美しい本、ありがとうございます。
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